訪問介護で使うChatGPTプロンプト(呪文)

昨年11月末にリリースされ、またたく間にビジネスシーンを一変させてしまった大規模言語モデル生成AIのChatGPT。
まだ4ヶ月しか経っていないのに様々なサービスが派生し、今では仕事に欠かせないツールになってしまいました。
ChatGPT自体も、当初のGPT-3.5からGPT-4にバージョンアップされ、精度も飛躍的に向上したようです。

資料作成や要約、チャットなどで既に使いまくっています。
サービス提供責任者一人ひとりに、それぞれアシスタントが付いたようなものなので、効率爆上がりです。

さて、このChatGPTを使うのには仕組み上、コツが必要になります。
ネットには、ChatGPTに指示を出すプロンプト(命令文,指示文)の例があふれています。
中でも、一言加えるだけで、生成される文章の精度を劇的に上げるプロンプトは、「呪文」とも呼ばれています。
ChatGPTの中身は完全にブラックボックスで、とにかくやってみないと、どんな出力が出てくるのかは分かりません。
もっとおそろしいのは、ChatGPTが出した出力結果がなぜ人間からみて自然な言葉に感じるのか、根本的な理由が分からないということなのですが。。。

さて、訪問介護特有のものがあるので、ネットの情報がそのまま役に立つわけではありません。
例えば、ヘルパー向けの会議では事例検討を通じて皆に考えてもらう月もあるのですが、困難ケースのストーリーをChatGPTに作ってもらおうとすると、いい感じで課題山積の部分で止まらずに結論や具体的対処方法までスラスラと書き出してしまうことがしばしばあります。

いろいろ試してみて、なかなかうまくいきませんでしたが、試行錯誤を繰り返して、何とかそれらしい文章の作成ができるようになりました。
今回は、「訪問介護で使うChatGPT呪文」と題して、訪問介護特有のプロンプトを記事にしました。
もっと良いプロンプトがあるよ、という方は、ぜひぜひお教えください!

以下は、事例検討を生成するプロンプトの一例です。

■訪問介護で使うChatGPTプロンプト〜事例検討

ヘルパー向けの研修で用いる訪問介護における困難ケースの事例の具体的なストーリーを作成してください。

条件は、以下の通りです。

困難ケースの事例のストーリーには、以下の条件を織り交ぜてください。
・利用者プロフィール
・利用者経歴
・経緯(時系列)
・現在の状況
・盛り込みたいキーワード
・(文字数)等その他の条件

ストーリーには、登場人物の感情の浮き沈みを織り交ぜてください。

また、ストーリーの結末は、未解決のまま、課題や問題を残したままになるようにしてください。

こんな感じで、条件には実際の事例を元に、思い当たるようなものを入れてゆきます。
で、実際に生成された例が以下になります。なんだか凄いです。

細かい設定の中身は実際の事例ではなく、ヘルパーさんに考えてほしいポイントの振りで完全に架空なので、プライバシー配慮にもバッチリです。

■実際の出力例(ChatGPT-3.5)

Aさんは80歳の女性で、定年退職するまでは経営コンサルタントとして活躍していました。趣味は生け花で、毎週のようにお花を活けては自分の部屋を飾っていました。

しかし、3年前に夫と死別し、一人暮らしになったAさんは、次第に孤独感に苛まれるようになりました。

1年前に自宅内で転倒し介護が必要になったAさんは、訪問介護を利用するようになりました。ヘルパーは週2回、掃除、買い物、調理などの支援で入っています。

しかし、Aさんは時々、自分でできないことを無理にやろうとしたり、ヘルパーを煩わしがることがあります。
Aさんは要介護2で、軽度の認知症もあります。
息子と娘は海外在住で、なかなか帰国することができません。

Aさんは衛生に無頓着になり、ゴミを出さずに部屋にため込んでしまうことがあります。
また、近所の野良猫にエサをやったり、部屋の中に招き入れて一緒に遊んだりすることもあります。
Aさんは、時々、自分の家族を思い出しては涙を流すことがあります。
また、趣味である生け花には、自分の感情を表現できる場があるようで、活けたお花を見てはニコニコと笑顔を見せることもあります。

しかし、Aさんの家の環境改善については、ヘルパーが提案しても、拒否されてしまうことがあります。
また、半ば野良猫を飼っているということもあり、近隣住民からの苦情が出ていますが、Aさんは野良猫と一緒にいることを望んでいるようで、解決策が見つかっていません。

細かいプロフィールやキーワードを追加すれば、さらに詳しい文章にすることも可能でしょう。

ところで、そうこうしているうちに、今までウェイティングリストで順番待ちになっていたMicrosoftの新しいBingが、突然利用可能になっていました。
Bingの新しいサービスにはAIが追加機能で備わっていますが、なんとエンジンがGPT-4らしいです。
さっそくMicrosoft Bingで同じプロンプトで試してみました。
実際に使ってみると、ChatGPT-3.5よりも格段にすごいことになっていました。
以下が実際に生成された文章です。

■実際の出力例 その1(Microsoft Bing)

Aさんは80歳の女性で、定年退職するまでは経営コンサルタントとして活躍していました。
趣味は生け花で、夫と共に美しい庭を作っていました。
しかし、3年前に夫と死別し、1年前に自宅内で転倒して介護が必要になりました。
現在は要介護2で、軽度の認知症もあります。
息子と娘は海外在住で、なかなか会えません。
そこで、訪問介護ヘルパーを週2回利用しています。
ヘルパーは掃除、買い物、調理などの支援をしてくれます。

ある日、ヘルパーのBさんがAさんの自宅に訪れました。
BさんはAさんの家の中を見回すと、ゴミが散らかっていることに気づきました。
ゴミ箱は溢れており、床やテーブルにも空き缶や紙くずが落ちていました。
BさんはAさんに声をかけてみました。

「Aさん、こんにちは。今日はどうされましたか?」

「あら、Bさん。こんにちは。私は元気よ。」

「そうですか。それは良かったです。でも、このゴミはどうなさったんですか?」

「ゴミ?どこに?」

「ここですよ。ゴミ箱が溢れていますし、床やテーブルにもゴミがありますよ。」

「え?そんなことないわ。私はきちんと片付けているわよ。」

「そうですか?でも、これはゴミですよね?」

「それは違うわ。それは私の大切なものよ。」

BさんはAさんの指差す方を見ると、空き缶や紙くずではなく、生け花の花材や道具があることに気づきました。
Aさんはそれらをゴミと区別できなくなっていたのです。

「Aさん、これは生け花の花材や道具ですよね?」

「そうよ。私の趣味だからね。」

「そうですか。でも、これらはもう枯れてしまっていますし、道具も錆びていますよ。これらを捨ててしまいましょうか?」

「捨てる?絶対に嫌よ!これらは私の宝物なのよ!夫と一緒に作った庭の思い出なのよ!」

Aさんは怒ってBさんを突き飛ばしました。
Bさんは驚いて後ろに倒れましたが、幸い怪我はありませんでした。

「Aさん、大丈夫ですか?ごめんなさい、失礼しました。」

「あなたは何様なのよ!私の家に来て勝手に物を捨てようだなんて!出て行きなさい!二度と来ないで!」

AさんはBさんを追い出そうとしましたが、Bさんは必死に説得しようとしました。

「Aさん、落ち着いてください。私はあなたのためを思って言ったんです。このままでは衛生的ではありませんし、火事や虫の・・・(以下続く)

■実際の出力例 その2(Microsoft Bing)

Aさんは、80歳の女性で、定年退職するまでは経営コンサルタントとして活躍していました。
趣味は生け花で、夫と一緒に日本各地の美しい花を見に行っていました。

しかし、3年前に夫と死別し、1年前に自宅内で転倒して介護が必要になりました。
現在は、訪問介護ヘルパーを週2回利用しています。
ヘルパーは、掃除や買い物や調理などの支援をしてくれますが、Aさんはあまり感謝していません。
要介護2の認定を受けていますが、自分はまだ元気だと思っています。軽度の認知症もありますが、それを認めたくありません。
息子と娘は海外在住で、連絡もほとんどありません。

ある日、ヘルパーがAさんの家に訪れました。
ヘルパーは、玄関の前にゴミ袋が積み上げられているのに驚きました。
ゴミ袋の中身は、空き缶やペットボトルや新聞紙などでした。
ヘルパーは、Aさんにゴミ出しの日を尋ねましたが、Aさんは「知らない」と答えました。
ヘルパーは、ゴミ出しの日を教えようとしましたが、Aさんは「私はゴミなんか出さない」と言い張りました。
ヘルパーは、なぜそう思うのか聞きましたが、Aさんは「これらは私の宝物だから」と言いました。

ヘルパーは、Aさんがゴミを溜め込むことで衛生的な問題や近隣トラブルが起こる可能性があることを説明しようとしましたが、Aさんは聞く耳を持ちませんでした。
Aさんは、「私の家に来て何をするのか。私に口出しするな」と怒鳴りました。
ヘルパーは、Aさんをなだめようとしましたが、Aさんは「あなたたちは私のことを理解してくれない。私に必要なのはあなたたちではなくて、夫だったのよ」と泣き出しました。

その時、玄関から野良猫が入ってきました。野良猫は、ゴミ袋の中から何か食べ物を探そうとしていました。
Aさんは、「あら、可愛い子」と言って野良猫に近づきました。野良猫は、Aさんに威嚇するように鳴きましたが、Aさんは気にしませんでした。
Aさんは、「あなたも私と一緒に暮らそうか」と言って野良猫を抱き上げようとしました。しかし、野良猫は抵抗して爪を立てて噛みつきました。Aさんは、「痛い!」と叫びました。
ヘルパーは、「大丈夫ですか?早く手放してください」と言って駆け寄りました。しかし、Aさんは、「離さないわ!この子が私の唯一の友達なのよ!」と言って・・・(以下続く)

すごい! リアルな会話まで自動で生成してくれます。いったい、どうやって生成しているのでしょうか? 驚いてしまいます。

しかしながら、ここまでデジタル技術が発展普及すると事務作業面において、サービス提供責任者に求められるものが大きく変わってきそうです。
プログラミングの基礎や動画編集など、これまで無縁だったスキルがある方が良くなる気がしてきました。
訪問介護と言えども、時代の流れとは無縁ではいられません。